岸本聡子 公式ウェブサイト
カタロニア州都バルセロナ市(人口160万人)で地域の市民政党であるバルセロナ・コモンズは市議会で第一党を二期にわたって担っています。そのリーダーであるアダ・コラル氏が二期目の市長を務めています。2023年5月28日にスペインで統一地方選挙があり、バルセロナ・コモンズやコラル市長の評価を市民は問うことになります。
岸本聡子は、コラル市長に以下の応援メッセージを送りました。また、バルセロナ市の8年の市政運営の実績や、トランスフォーメーションの鍵となるテーマやプロジェクトを簡潔にまとめた文書もご紹介します。
2021年に書いたコラム「世界一ラディカルな市長?アダ・クラウ(バルセロナ)」もどうぞ。
アダ・コラウへの応援メッセージ
バルセロナ・コモンズによる市政の成果と未来
バルセロナ・コモンズを構成する多様な出自や感度の人々がわれわれの組織の強さであり魅力である。私たちは、住まいの権利、公的医療・公教育を守る地域社会の運動や、LGBTI(注1)、環境運動、M15(注2)といった運動を担ってきて、バルセロナ・コモンズを形成した。私たちの多くは政治や政党に参加したことがなかった。私たちは活動家であり、さまざまな分野の仕事人であり、若者、移民、高齢者である。その共通の視点は、多数の人々の必要や思いが未来のバルセロナを形作るべきだということだ。
バルセロナ市議会は、フェミニストであること、ケアをする都市であることをはっきりと表明しているが、その具体的な意味は、都市計画政策のデザインの仕方だけでなく、人々のニーズを最優先する社会政策を探求し続けることだ。例えば、歩行者や人間の関係性を優先する人中心の都市づくりはスーパーブロック(注3)イニシアティブが体現している。
バルセロナ・コモンズの基本的な価値観は:政治の民主化とフェミナイゼーション、社会正義と公正、人々と環境にやさしい新しい都市計画モデル
中心的な課題
1,フェミナイゼーション
国で初めてフェミニズムとLGBTIの担当部を市議会として設置。そして◇女性への暴力に対応する公的サービスを提供するSARAの設置
◇より開放的、敬意ある、健全な関係を求める男性を支援するセンターを複数設置
2,よりグリーンな都市計画モデル
私たちは私的利用の乗用車を削減し、人々がすごす公共空間を広げる土地利用のトランスフォーメーションをすすめている。それは大気汚染を緩和し、コミュニティー構築のためのスペースを増やすことでもある。◇スーパーブロック;人々が歩き集える公共空間を広げ、汚染を削減し、ビジネス機会を広げる。スーパーブロックをポブレヌ地区、セントアントニ地区をはじめ他にも建築中。
◇グリーンスペース;バルセロナは自転車レーン(かつての2倍に)を含む生活のための公共空間を100万M2拡大した。市の両端を繋ぐべくトラム路線を拡大中。3,産業ロビーと闘う
私たちの中心的な目標の一つは、産業ロビーや既得権益ではなく、市民と手を携えるより民主的な市政と政策決定である。◇バルセロナエネルギー社(BarcelonaEnergia) ;国で初めての100%公的な電力会社を設立
◇公共調達において社会・環境要件を導入
◇バルセロナ空港(Barcelona-ElPrat)の拡大に反対
4,健康、ケア、子育て分野の改革
この分野の最終的な目標は、孤立をなくし、近隣のつながりと関係に基づいたケアのコミュニティーを育てることで、ケアの共同性を活かすアプローチを取っている。◇公的なベビーシッターサービスConcilia
◇自殺防止のヘルプライン、10代、20代の若者のための公的なメンタルケアサービスの提供
◇公的な歯科サービスの提供
5,住宅政策
バルセロナ市は州の中でもより多い公営住宅を提供している。私たちは(ローンや家賃の不払いにより)住人の強制退去を防ぐユニットをつくり、違法な観光のための宿泊施設を制限または取り締まり、家賃を上げるために投機を行う家主をと取り締まった。他には◇(止まっていた)公営住宅の建設を再開;2015年から4000戸を増やし、現在2000戸を建設中。
◇PEUATというプログラムを開始し、違法な観光のための宿泊施設のアパートを閉鎖。
6,政治の民主化
地区計画
バルセロナ市にある23の地区それぞれへの投資を3倍に拡大、結果として住民一人当たりの社会的な投資額は州で一番となった。
Decidim.Barcelona (市民の政治参加のためのデジタルプラットフォーム)
バルセロナの歴史で初めて市民参加プラットフォームを作成。このソフトウエアはオープンソースであり今日世界中で使用されている。
7,街を子どもの視点で見てみる
バルセロナ市はこどもの自由を街のあり方の中心に置く。公共空間で子どもたちの遊ぶ権利を守るとは、通り、公園、ビーチ、学校など街のすべての場所で子どもたちが遊べることだ。すべての都市計画はこどもたちのウェルビーイングを考慮して行う。学校を守ろう
学校の周辺においてはこどもの安全とウェルビーイングを最優先する改革を行ってきた。例えば学校周辺の交通量を減らし、ベンチを置いて皆がたまって時間を過ごせるエリアをつくり、植物を植える通りを緑化、こどもたちが通りで遊べる小規模な遊び場の整備。学校の校庭の改革
木(日陰を作る)や植物、遊具を増やす子どもたちが遊べる900以上の公共空間を作った
その中にはいくつかユニークな機能を持つ大型のものもある。大切なことは障害を持つ子をふくめたすべての子どもがこれら子どもの遊び場すべてにアクセスできることだ。(注1)いわゆる性的マイノリティの総称として用いられる表現。レズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性的アイデンティティが一致しない者)、インターセックス(外性器が男女未分化な者)、の頭文字をとった呼称。LGBTIは、性的マイノリティを指す呼称に伴いがちな「少数派」や「異常者」というような否定的ニュアンスや蔑視の意味合いが含まれない呼称として、当事者にも、公的機関なども用いられている。
(注2)「怒れる若者たち」(Indignados, the outraged)と呼ばれること になる「5月15日運動」(M15)の主な担い手は,緊縮財 政による教育予算削減に抗議する学生たち,住宅ロー ンが払えなくなり住宅改革を求める若者たちら。彼らは 2012年2月10日,マドリードに集まり,経 済危機のなかで失業率が5割を超える若者たちの状況 (「未来なき若者」と呼ばれ,「家もない。仕事もない。 年金もない。ただ,われわれには恐れもない」)と5 月 22 日の地方選挙投票日の1 週 間前,5月15日にデモを行うことを決めた。 この呼びかけは,マドリードをはじめ,バルセロナ,グラ ナダなど全土で13万人が集会・デモを行った。マドリー ドのプエルタ・デル・ソル広場には,4万人の若者が集まっ てきた。参この動 きは,スペイン全土で600 万人が参加するほどに膨れ 上がった。
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