2024年度の予算が成立しました!
2024年度の予算が成立しました!
―杉並区議会 定例議会でのハイライト①公共の再生ー
杉並区議会第一回定例会は予算編成方針に対する代表質問から始まり、一般質問、常任・特別委員会、予算特別委員会を経て、本会議での議決と長期間に渡るため(2月9日~3月18日)、区民にとってその全容を知るのは大変なことです。これまでの議会や庁内での議論を踏まえ、私にとっての2回目の予算編成により、公約の実現に向けて、さまざまなことが前進しています。すべてを網羅的に書くことはできませんが、特に力をいれてきたことについて、私なりのハイライトを3つに分けて紹介します。
*予算の編成方針とその概要*
*本会議、委員会の質疑(令和6年第一回定例会)*
能登半島地震の発生を受けて防災・減災対策の取組を 加速化させることを示しました。また、給食費の無償化を杉並区のすべての小中学生に広げました。
こどもの権利擁護を進める中で、家庭や学校で安心して過ごせない中高生の居場所の確保<こどもイブニングステイ>、児童養護施設を巣立つ子どもの自立支援など新たな事業もスタートします。こどもの声を聞く取り組みは意欲的に進んでいます。これまでに小学校などに職員が出向き、
950人以上の子どもたちの考えを聞きました。2回目の子どもワークショップの公募に46人(30
人定員)が応募してくれたことは、取り組みが広がっている成果の現れです。子ども政策を担当する部署を超えて組織横断的な広がりとなり、職員の中でも機運が高まっています。
令和6年度一般会計の歳出予算規模は、2,228 億 9,200 万円、前年度と比較して121 億 9,200 万円、5.8%の増加です。
予算の編成方針とその概要の中で「公共の再生」の考え方を示したことで議員からたくさんの質問を受けました。その一つを紹介します。
代表質問:区長が「公共の再生」を掲げているその根底にある問題意識について、改めて伺う。
区長答弁:私が「公共の再生」を掲げる根底にある問題意識についてお答えします。
1980年代に登場した新自由主義は、経済が慢性的に停滞していたイギリスを中心に世界中に広がり、電話、交通等公共事業の市場化、労働の規制緩和、グローバル資本の導入などが進められていきました。2000年代には、介護や保健といった地方自治体が深くかかわるケア産業の分野にもその波は及びました。
市場化された公共事業においては、ともすると営利が優先され、公共サービスの利用者負担が増加し、さらには劣化する、住民が改善を求めても聞き入れられない、情報開示がなされないといった事例がいたるところで発生しました。過度に民間事業者の経営を優先した結果、公共サービスでありながら住民の自治権が及ばない状況、公共財を自治体と住民とがコントロールできない状況に陥ったといえます。
また、公共事業で働く労働者の非正規化が進んでいきました。ここには公務員も含まれますが、低賃金化し、有期雇用ではキャリア形成もままならず、将来に不安を持ちながら生活を送る労働者が増加しました。ジェンダー平等の取り組みが遅れている日本では、とりわけ女性の非正規化が顕著であり、こうした中で、結婚をためらい、子どもをあきらめる若者、女性が増加することは当然のことと言えます。
このような構造的な問題について、私は大きな課題意識を持っており、これを改善していこうとするプログラムを私は「公共の再生」と表現しています。
その大きな目標は自治に基づき、豊かで公正な経済と地域のウェルビーイングを実現することです。そのために公共財をいかに民主的に管理、運営、創造するのか、考える必要があると提起しています。公契約の相手方となる事業者を選定する際に、環境配慮行動、女性の登用といった社会的課題に取り組む姿勢や、従事者の労働環境などを評価する仕組みを導入すること、公務において、行政課題に適切に対応して職員定数を引き上げること、会計年度任用職員の処遇を改善していくことなどは、まさに「公共の再生」を目指した取組の一環です。地方自治体ですべてを解決できるものではありませんが、なし得る限りの努力をしてまいりたいと思います。
このような長期的な視点を持ち、自治体として何ができるのか示し、具体的に進んでいきます。来年度予算の中で、以下のことを変えることができました。
【1】公契約条例について
杉並区には公契約条例があり、一定以上の規模の区の仕事を請け負う事業者の労働者の賃金などを定めています。賃金は職種によって違いますが、事業者が労働者に支払う報酬の下限とすべき額(労働報酬下限額)が大切です。杉並区は労働報酬下限額を今までの1138円から1231円と大きく値上げすることができました(+8.17%)。ちなみに東京都の2023年の最低賃金は1113円です。公契約条例は、指定管理者契約も対象となりますが、区内には図書館やスポーツ施設など39の指定管理者施設があります。指定管理者施設の従事者の7割以上が非正規雇用であり、その多くが区内在住の女性ですので、報酬額の引き上げは公共サービスに関わる多くの女性の処遇改善につながります。
【2】会計年度任用職員について
●会計年度任用職員(非正規の公務員)の報酬額を引き上げます。会計年度任用職員総数の44%(1100人)が対象になります。
【引き上げ額】
◆保育(約720人) 時給 約70~80円
◆児童指導(370人)<学童クラブや放課後居場所、児童館の職員> 時給 約150~170円
◆部活動指導員(約10人)時給 約670円
◆介護認定調査員(約7人)月額 約2万円
●会計年度任用職員の処遇向上のために
全職員の41%(2506人)が会計年度任用職員(有期雇用の非正規公務員)。そのうちの85%は女性です。昨年の地方自治法の改正により、会計年度任用職に支給されていなかった勤勉手当(2.25月)を支給できることになりました(23区共通)。そのために約9億円が来年度予算案に計上されました。
【杉並区独自】の取り組み
会計年度任用職員も有給で生理休暇を2日まで(23区初)、災害休暇7日、ボランティア休暇(1-5日)を取得できるようになります。公務における女性の労働はジェンダー平等のための重要な政策課題だと私は考えます。
【杉並区独自】の取り組み
杉並区で会計年度任用職員は、およそ7年で報酬上限に達するとその後給料が上がりませんでしたが、そこから3号級上げることを決めました(一号級の平均引き上げ額は月1300円)。昇給の対象のうち、すでに上限に達した職員41%(870人)が対象になります。
【3】杉並区の職員が増えます
。自治体は職員の上限数を条例で定めています。2030年まで上限を3550人としていましたが、この度定員管理方針を改定し、2026年度までは3700人を上限とします。その大きな理由は令和8年に区立児童相談所の開設に向けて全力で取り組む中で児童福祉の専門職を60人増やします。感染症や災害に備えて保健所の体制強化のために9人増やします。またこれまで常勤職員の育休の際、会計年度任用職員が代替していましたが、残る職員に負担がかかりやすい環境となっていました。杉並区が魅力的な職場であるために常勤職員が育休代替できる組織体制を整えます。