2024年5月7日、感染症や災害などの重大な事態が発生した場合に、個別の法律に規定がなくても、国が自治体に必要な指示を行うことができる特例を盛り込んだ地方自治法の改正案が衆議院で審議入りしました。審議に先立ち、ローカルイニシアチブネットワーク(LIN-NET)は4月20日に「「分権と地域主権」に逆行する地方自治法「改正案」に対する声明」を発表しました。2000年の地方分権一括法によって国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に変わりましたが、今回の改正案はこれに逆行するものであり、拙速な審議を危惧するという内容です。LIN-NETは5月7日に院内集会「「徹底検証!これでいいのか地方自治法『改正案』」も開催しました。岸本聡子はメッセージをお送りし、会場で読み上げられました。以下にその全文を掲載します。映像アーカイブもご覧いただけます(文末)。
杉並区長の岸本聡子です。今日の院内集会にお集まりの皆さまと共通の問題意識のもと、連帯のメッセージを送ります。
2011年、東日本大震災において被災した南相馬市に対し、同市と災害時相互援助協定を結んでいる杉並区と、同じく区と協定を結んでいる北海道名寄市、新潟県小千谷市、群馬県東吾妻町とが連携し、国に先んじて物資の支援、職員の派遣や避難所の確保、避難生活者への支援を行いました。その取組が非常に有効であったことから、「自治体スクラム支援会議」を結成することとなり、国に対して、国からの指示・要請を待つことなく、地方公共団体が自らの責任と権限で被災地の支援を行えるよう制度の見直しを要望し、これによって災害対策基本法の一部改正につなげていくことができました。
地方公共団体が必要に応じて連携し、住民の生命と財産を守るために主体的に取り組むことこそ重要です。新型コロナウイルス感染症への対応や能登半島地震への対応においても指示待ちではない自治体の迅速な判断と実行力が光りました。
今般、提出された法律案は、こうした地方公共団体による成果を評価していないばかりか、2000年の地方分権一括法によって構築された国と地方の「対等・協力」の関係をも損ねかねないものです。
「国民の安全に重要な影響を及ぼす事態」が発生したときに、国と地方自治体が迅速に協力できる能力と信頼関係こそが必要です。
今、多くの人が政治に絶望に近い思いを抱いています。長年にわたる金権政治、世襲、圧倒的なジェンダー不平等が日本の政治を私たちから遠いものにしてきました。しかしそんな中、「地域に希望あり」という声も多く聞こえてきます。足元から自治と民主主義を確かなものにし、政治への信頼を取り戻そうと多くの人がLIN-NETに集っています。私もその一員です。今回の地方自治法改正案は私たちが大切にしている分権と地域主権を深く傷つける恐れがあります。拙速な審議により成立することに重大な危惧を覚え、LIN-NETの一員として反対します。
杉並区長 岸本聡子